お蚕さまからのたより|VOL.10 漢方の薬草として、人々が工夫を凝らし、取り入れた冬虫夏草
古くから中国で漢方の薬草として重宝されてきた冬虫夏草。虫を栄養源とするキノコという、ちょっと不思議な生態ですが、冬虫夏草のパワーに気付いた人々が、どのように冬虫夏草を暮らしに取り入れてきたか、調べてみました。今日も冬虫夏草と人の歴史のお話に、お付き合いください。
1.中国では、漢方として肺や腎臓の調子に悩む人に
2.江戸時代には本草学、医学、博物学などで関心の的
3.酒に浸したり、煮出したり。工夫して摂取
1.中国では、漢方として肺や腎臓の調子に悩む人に

不老長寿や滋養強壮の秘薬であると中国で信じられてきた冬虫夏草。漢方の世界では、冬虫夏草(シネンシストウチュウカソウ)は、薬草として用いられてきました。現在でも中国では特に肺や腎臓のことで悩みを抱える人が、これを愛用することが多いそうです。
中国には「陰」と「陽」を重んじる思想がありますが、動く虫(=陽)と動かない草(=陰。この場合はキノコですが…)の両方を備えていることからも、冬虫夏草は大切にされたのだという説もあります。
2.江戸時代には本草学、医学、博物学などで関心の的
江戸時代、日本でも冬虫夏草は人々の関心を集め、本草学、医学、博物学などいろいろなアプローチで書物に登場しています。実際に、冬虫夏草を見る機会もありました。それが薬品会や物産会です。本来は、本草学者などが実物を目にする場であったようですが、学者ではない人も冬虫夏草を見る貴重なチャンスとなりました。
薬品会や物産会は、江戸、尾張、京都、大阪、熊本など各地で開催され、文化9(1812)年の京都で行われた物産会では、柚木常盤という人が、冬虫夏草を出品したことが記録に残っています(※中国産か日本産かは不明)。
柚木は滋賀県蒲生郡日野町下迫村で、代々眼科を家業した家柄。常盤は眼科医でありつつ、『冬虫夏草生写―江州産―』を書き記し、本草学に造詣が深かったと思われます。この物産会には、本草学者、医者、薬種商以外に、公家や僧侶なども出席していました。
3.酒に浸したり、煮出したり。工夫して摂取

さて、中国では「不老不死の妙薬」とも言われる冬虫夏草。人々にどのように取り入れられてきたのでしょうか? これについても本をひもといてみましょう。
乾燥したものをそのまま食べる。粉末にして摂取する。そのほかにも、お酒に浸しておいてそのお酒を飲んだり、または煎じて飲んだり、煮詰めるなどして薬膳料理にしたり……。古来よりさまざまな工夫をして取り入れてきました。飲みやすさを追求した苦労の数々かもしれませんね。
国産カイコハナサナギタケ冬虫夏草を原料とした健康食品である天虫花草は、サプリメントして飲みやすい錠剤タイプです。実は、現在もドリップパックのコーヒーにしたり、京飴に混ぜ込んだり。より飲みやすさを追求した商品も研究しています。先人たちがそうであったように、さまざまなシーンで人の暮らしを支えたいと願っています。
参考図書
・日本冬虫夏草の会編『採集・観察・分類・同定、効能から歴史まで240種類 冬虫夏草生態図鑑』(2014年、誠文堂新光社)
・奥沢康正著『冬虫夏草の文化誌』(2012年、石田大成社)
- - - - - - -
明日はもっと、豊かな自分に。
あなたの毎日に寄り添う『天虫花草』は、最新の情報や日々のお知らせをSNSで発信しています。
フォロー、友達追加のほど、よろしくお願いします。