お蚕さまからのたより|VOL.16 植物からの返信“Re:planter”を見せてくれる、植栽家・村瀬貴昭さん~前編~
今回ご紹介するのは、植栽家・村瀬貴昭さん。球体のガラスの中に作り出された植物世界“SpaceColony”はLEDの光に照らされた幻想的なアートのよう。カイコハナサナギタケ冬虫夏草を使った“SpaceColony”は、2022年3月に開催された天虫花草のお披露目会や百貨店の催事会場で、御来場者のみなさまに見ていただいています。村瀬さんが“SpaceColony”をつくるようになったきっかけや作品に込めた思いを、2回にわたってお届けします。
目次
1.大原の自然を感じながら “SpaceColony”をつくる
2.盆栽やアクアリウムにひかれて
3.人工物の上で生きていく植物の美しさ
1.大原の自然を感じながら “SpaceColony”をつくる
訪れたのは京都・大原。山や田畑の緑が美しい一角にある日本家屋で、村瀬貴昭さんは“SpaceColony”をはじめ、さまざまな作品を生み出しています。中に入ると、植物のほか、工具や石などもあり、工房というよりは工場といった雰囲気。たくさんの“SpaceColony”が、天井から吊るされたり、棚に並んでいたり。多種多様な植物が命の営みを続けていました。
村瀬さんがここで取り組んでいるのはRe:planter(リプランター)というソロプロジェクト。「消費社会に対する自然からの返信(Re:)をテーマに、あらゆる植物と人工物を融合し理にかなった植栽表現を探求する」がコンセプト。Re:planter とは、Recycle(再生)×Plants(植物)×Player(者)を合わせた造語です。たしかに、“SpaceColony”は、ガラス、LEDライトが使われ、なかには陶器の破片のようなものがはいった作品も。どうしてこのような作品をつくることになったでしょう。まずは、そんなお話から伺いました。
2.盆栽やアクアリウムにひかれて
村瀬さんの出身は大阪市住之江区。高校で建築を学ぶも、卒業後はオーストラリアでDJをしたり、京都で家具職人をしたり。その経歴は紆余曲折でとてもユニーク。いろいろな経験をしながら、植物への関心は幼いころから。奈良に住む祖父の影響で盆栽に興味を抱き、またプラモデルのように手でものをつくることも好きだったそう。「小さいのに大きい木に見えるのが面白いなと思って、ジオラマ的にガンダムの後ろに小さい盆栽を置いたりしてました(笑)」。加えて、アクアリウムも関心が。「LEDを使って水草育てたりとか、アクアリウムは植物の最新機器が揃ってるんですよ。カメを飼って、水の中の景色と陸の上の景色の両方を水槽に作ったりして遊んでました」。こうした経験が、Re:planter村瀬さんの土台にあるようです。
3.人工物の上で生きていく植物の美しさ
転機は30歳、知人と京都の繁華街、四条河原町にカフェをオープン。その内装を村瀬さんが手がけました。ヒントにしたのは廃墟。当時、村瀬さんは廃墟巡りに凝っていて、各地の廃墟を訪れていたのだとか。「廃工場の上方の窓から光が差し込んだところにだけ、植物が生えている、そんな様子を美しいと感じました。人工物を植物が徐々に浸食していく。そんな狙ってできない美しさがある空間の造形美が好きだったんです。カフェもたとえ建物が古くても、植物を上手く利用すれば人が落ち着いていられる空間になるんじゃないか。そう思って低予算でつくったら結構噂になって」
この空間が評判になり、内装や植栽の依頼が来るように。そうして、さまざまな空間を手掛ける中で発案したのが、球体のガラスを使った“SpaceColony”でした。「京都は建物が隣接していて、暗くて、スペースも広くないことが多い。たまたま友達のアンティーク店で、船の照明を見かけて、これだったらLEDを内部に組み込んで、樹木や草を入れたら育つんじゃないかと」。LEDによって暗いところでも育ち、半密閉で水もさほど出ていかず育てやすい“SpaceColony”。改良を重ね、こうして世に送り出されることになったのです。
独学で研究し、改良を重ね、進化してきた村瀬さんの“SpaceColony”。後編はどうやってこの世界を作り出しているのかに迫ります。
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明日はもっと、豊かな自分に。
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