特集》 京の行事食おつゆレシピVOL.7 重陽の節供―揚げなすのおつゆ
もうすぐ9月、猛暑もようやく終盤ですね。少しずつですが、季節は秋に向かっています。おせち料理・行事食研究家の小宮理実さんに、おつゆレシピをご紹介していただく「京の行事食おつゆレシピ」特集も、今回は秋の味。9月9日の「重陽の節供」に味わいたい、揚げなすのおつゆレシピをご紹介します。
美しい菊を取り入れて、健康を願う秋の行事
これまでご紹介してきた節供と同様に、重陽の節供にも中国の物語や考え方が影響しています。中国では陰陽五行の思想に基づくと「9」は「陽の数」とされる奇数のうち最大の数で、陽が重なると不吉なことが起こると恐れられていました。しかし、後漢時代、桓景という人物が9月9日に高い山に登って菊酒を飲むことで、災難を逃れることができました。
この故事にちなみ、厄除けや無病息災を願って行われていた風習が日本にも伝わり、宮中で菊の宴などが行われるように。重陽の節供、菊の節供として江戸時代には民衆の間にも広まりました。
菊の香りが移った真綿で身を拭き清めたり(「菊の被綿(きせわた)」)や、花びらを浮かべたお酒「菊酒」や花びらのお浸しをいただいたりと、菊を用いて不老長寿を願います。そのほかにも行事食として、秋の味覚・栗を入れた栗ご飯や茄子を使った料理があります。昔から9月の9がつく日に茄子を食べると風邪をひかないとも言われています。茄子をたっぷりと使った「揚げなすのおつゆ」に菊の花びらをちらして、家族の健康を祈りましょう。
「揚げなすのおつゆ」のレシピ
<材料> 2人分
なす 1~2本
おろしショウガ 適量
だしつゆ 350cc程度
片栗粉 大さじ1
食用菊 適量
<作り方>
1)なすを縦半分にし、切り目を入れ、食べやすい大きさに切る。
2)1)に片栗粉をまぶし、160度の油でさっと揚げる。
3)だしつゆをあたためる。
4)器に3)を盛り、3)をかけ、おろしショウガを添えて菊の花をちらす。
小宮理実さんからのワンポイント
9月9日重陽の節供は、菊を主役に、長寿を祈願する日です。旬を迎えるなすを揚げなすにしてコクを出しつつ、菊をちらした風情あるおつゆとおろしショウガで、さっぱりとといただいてください。
《小宮理実さんプロフィール》
お節・行事食研究家 小宮理実(こみやりみ)
京都生まれ、京都育ちのおせち料理・行事食研究家。5歳の頃から祖母の手ほどきでおせち料理作りをはじめる。京都ならではの暦を意識した食と暮らしを刷り込まれて育つ。現代の暮らしに京都の知恵を生かす工夫を考案する。食育、企業の商品開発、おせち料理の監修・テレビ・ラジオ・雑誌で活躍中。近著に『福を呼ぶ 京都食と暮らし暦』(2019 年 青幻舎)『京のおばんざい四季の味』(2019年 家の光協会)がある。
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